私の記事には、よく「シリコンバレー」「サンフランシスコ」といった地名が出てくるのですが、早速「サンフランシスコとシリコンバレーってどういう関係なんですか?シリコンバレーの一部がサンフランシスコ?」というご質問をいただきました。ですので、ここでサンフランシスコとシリコンバレーの地理的・経済的・人的関係と、最近のシリコンバレーからサンフランシスコへの比重のシフトについてお話します。
サンフランシスコ・シリコンバレーってどこのこと?
サンフランシスコは、一都市の名前であるのに対し、シリコンバレーはパロアルト、マウンテンビュー、サンノゼなど複数の都市を総称するエリア名です。下記マップでも分かるように、サンフランシスコは半島の上部に位置する都市で、シリコンバレーは半島の中部~付け根にあたります。シリコンバレーは半導体産業の中心地であったことから、1970年頃にその名称がつけられました。ちなみに、サンフランシスコやシリコンバレー、サンフランシスコ湾の東側も含む、サンフランシスコ湾沿いの地域をベイエリアと呼びます。ベイエリアは多くの人が行き来する、ひとつの経済圏です。
サンフランシスコ・シリコンバレーはどうつながっているの?
もともとベイエリアは経済的・人的に密接につながっており、都市をまたいで通勤する人は多数います。近年は、多くの若いエンジニア達が住む場所としてサンフランシスコを選び始めています。シリコンバレーに比べて都会で、レストランやバーなど多くのエンターテインメントが充実しているからです。しかしながら、多くの大規模テック企業(Google,Facebookなど含め)はいまだシリコンバレーに位置しています。そのため、サンフランシスコからシリコンバレーに通勤する人が増え、渋滞を生み出しています。まず大きいのが渋滞。私の友人は、8年間サンフランシスコからシリコンバレー南端のサンノゼまで通勤しているのですが、5年前までは片道1時間でいけたのが、現在は片道2時間かかるようになったそうです。
シリコンバレーからサンフランシスコへのスタートアップの比重のシフト
通勤時間があまりにもかかりすぎるため、若いエンジニア達はシリコンバレーの会社を避けるようになり始めました。ベイエリアの就職市場は加熱しており、完全に売り手市場です。優秀なエンジニア達を獲得するため、最近のテックスタートアップ企業は、シリコンバレーではなくサンフランシスコに本社を構えるようになりました。これが、「近年のイノベーションの中心は、もはやシリコンバレーではなくサンフランシスコである」と呼ばれるようになった理由です。これを如実に示すのが、各地域のカリフォルニア州における資金調達にしめる割合の統計です。
エンジェル投資 | VC投資 | IPO | |
サンフランシスコ | 49% | 36% | 9% |
シリコンバレー | 37% | 37% | 40% |
(Data source: 2015 Silicon Valley Index, Silicon Valley Institute for Regional Studies)
エンジェル投資は、シードと呼ばれる超初期のスタートアップへの投資、VC投資は、主にSeries A-Series Dと呼ばれる中期スタートアップへの投資、IPOは後期における株式公開です。ご覧いただいて分かるように、IPOはまだまだシリコンバレー中心ですが、初期のスタートアップへの投資は、サンフランシスコの方がさかんです。今後10年もして、現在シードフェーズのスタートアップがIPOするようになれば、サンフランシスコでの経済活動の比重はより重くなるでしょう。
サンフランシスコへの比重のシフトの功罪
サンフランシスコへの人・経済活動のシフトは、サンフランシスコを文化的により繁栄させる一方で、地域社会における軋轢をも生み出しています。現在、サンフランシスコの土地の家賃は急騰しており、1LDKの相場は3500ドル前後(40万円以上!)になっています。東京の一等地の倍近い値段です。シリコンバレーのお給料事情に関するポストに書いたとおり、テック企業に勤めている人は、お給料で十分これが払えるのですが、そうでない住民は、サンフランシスコから引っ越さなければならなくなっています。テック企業に勤めていない古くからの住民は、GoogleやFacebookへの抗議活動を頻繁に行っています。
現在、経済活動の高まりに沸くサンフランシスコですが、これは単なるバブルではないかと警戒する向きも高まっています。次のポストでは、サンフランシスコ・(シリコンバレー)がバブルの中にいるのか、それとも実体のともなった成長をしているのかについて論じます。
勉強になります!ニュースでよく見る抗議活動は、そういうことだったんですね!
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