巨額の赤字を出しながら成長し続ける、アメリカのユニコーン・スタートアップ

アメリカでは、スタートアップはすばやい成長・拡大に力を注ぐべきで、黒字化はずっと後になってからで構わないという考え方が根付いています。黒字化を目標に事業を進めると、先行投資ができず、成長のスピードが遅くなってしまうことがあるからです。そして、「赤字のままで成長」を可能にするようなベンチャーキャピタルによる巨額の投資のシステムも出来上がっています。

アマゾンの例:創業後10年近く赤字を出しながらも、25兆円を超える企業に成長

赤字のままで成長をしてきた企業の代表が、アマゾンです。1994年の創業からずっと赤字の額を増やし続けたアマゾンは、2000年には実に$1400M以上(1500億円以上)の赤字を出しました。その後、2003年に初めて黒字転換するまで、実に10年近く赤字を出し続けましたが、思い切った事業への投資戦略が奏を効し、現在は$230B(25兆円)を超える時価総額をつけています。日本の時価総額トップ企業であるトヨタを大きくしのぐ額です。

ウーバーの例:収入よりも大きな赤字を出しながらも、6兆円の評価額をつける

より最近のスタートアップの中で、図抜けた成長戦略で有名なのは、カーシェアリングのウーバー(Uber)でしょう。ウーバーは最近、$415Mの収入に対して$470Mの赤字を出したと言われています。その巨額の赤字の原因の中でも大きいのは、新規市場開拓に伴うプロモーションです。

ウーバーはドライバー・ユーザー人口が共に少ない新規市場では成り立たないモデルです。ドライバーが少ない->ユーザーをドライバーが迎えに来るまでに時間がかかりすぎる->誰も使わない->ドライバーがますます少なくなる、という悪循環になるからです。そのため、ウーバーは新規市場ではドライバー人口・ユーザー人口を一気に増やすために、多額の費用をかけてプロモーションを行います。ウーバーは、本来はユーザーの支払った金額の2割をフィーとして徴収するのですが、新規市場ではユーザーの支払い金額よりも高い金額をドライバーに支払っているのです。

これは、新規市場でなく新規サービスでも同じです。ウーバーは1年ほど前にUberPoolという相乗りサービスを始めました。似たルートを通る乗客同士をマッチして、ドライバーがマッチされた2組の乗客をピックアップするというサービスです。乗客にとっては、到着までの時間が若干長くなる代わりに、従来の半額程度でウーバーに乗れるというメリットがあります。このサービスも、ユーザー数が少ないと成り立たないモデルです。ユーザー数が少ない->遠回りになるようなマッチになってしまう->到着に時間がかかりすぎるため誰も使わない、という悪循環が起こってしまうからです。そのため、ウーバーは大規模なプロモーションを行い、「乗客の支払い金額は、サンフランシスコ市内であれば、どこからどこまで移動しても、マッチされてもされなくても$5 」としました。物価が高いサンフランシスコでは、破格の安さです。ウーバーが受け取る金額は、マッチがない場合は$5のみ、マッチがあっても$5×2=$10です。一方で、ドライバーには従来のウーバーの金額(サンフランシスコ市内の移動では、距離次第ですが一般に$10-$20)を払い続けました。ユーザー数が少ない初期においては、マッチされることも少なかったので、ウーバーにとっては大赤字のプロモーションでした。しかし、それが奏功し、これまでは「タクシーの代替」であったウーバーは「バスの代替」にもなるようになりました。高所得者層だけでなく、学生や中所得者層も使うサービスになったのです。(ちなみに、現在はユーザー数が爆発的に増えたため、マッチはほぼ必ずされるようになっています。それにともない、UberPoolの赤字もかなり解消されているようです。)

ウーバーは2009年創業で、ほんの6年目の会社ですが、評価額は$50B(6兆円)となっています。

赤字を出しながら成長するアメリカのユニコーン企業

アメリカでは、時価総額(または評価額)が$1B(1000億円)を超えているスタートアップを「ユニコーン」と呼びます。成功したスタートアップの代名詞であるユニコーンの中でも、赤字のままの会社は数多くあります。Snapchat, Box, Twitter, Instagram, Squareなどがその代表です。アメリカのベンチャーキャピタルにバックアップされているスタートアップは、利益を追うより成長を追う、という精神が根付いているのです。

この戦略が必ずしも正しいとは限りません。そもそも、投資家のバックアップに恵まれたスタートアップ以外ではとれない戦略です。また、スタートアップによっては、資金を入れすぎず、創業者のシェアを高く保ちながらローリスクで進んでいく方がいいこともあるでしょう。しかし、経済大国でありながら、ユニコーンとなるスタートアップがあまり出てこない日本の現状を見ると、大きなリスクをとれるベンチャーキャピタル・起業家が育ってくる日が待ち遠しくも感じます。

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