トランプ当選後のアメリカのヘイトクライム

皆さん長らくご無沙汰しておりました。コンスタントにブログにアクセスがあるのは、うれしいばかりです!本日はホットトピックであるトランプ当選についてです。

11月8日のアメリカの大統領選挙で、トランプが勝ちました。正確には、勝つ予定です。アメリカは選挙人制度を採っており、Popular vote(国民の投票数)では僅差ながらヒラリーが勝っていますが、Electoral vote(州ごとの選挙人数)ではトランプの勝ちが決まりました。数十人もの選挙人が誓約を違えヒラリーに投票する、というアメリカ史上例を見ない出来事が起こらない限り、トランプ大統領が誕生します。私は日本に帰国中でこの歴史的な瞬間をアメリカで見ていませんが、思ったこともあるのでここに記しておきます。

カリフォルニアでの反応
カリフォルニアはリベラル州で、民主党支持が多数派です。今回の大方の予想を裏切るトランプ躍進に対する人々の受け止め方は様々です。ショックで泣き出す人、受け止められないとデモをする人、残念な結果ではあるものの理解を示そうとする人。将来のことを今心配しても仕方ないから普段通りにふるまおうという人、居ても立ってもいれられないと選挙人に対するヒラリーへの投票のロビー活動を呼び掛ける人。「人生で最も飲まなければやっていられない日だ」と、アルコールを無料でふるまう店もあり、今こそ他者への思いやりを示す時だと「Love Trumps Hate(愛は憎しみに打ち勝つ:勝つという動詞のTrumpとトランプ氏をかけた博愛スローガンです)」を掲げるイベントもあります。カリフォルニアの価値観は他のアメリカとは違う、とCalexit(カリフォルニアのアメリカからの独立)を叫ぶ動きも高まっており、大きなベンチャーキャピタルが数社賛同もしています。

トランプ支持者たちの支持の理由
半数近くにのぼったトランプ支持者の支持の理由は千差万別です。自由化によるあおりを受けている工場労働者、オバマケアで保険料があがった(と信じている)人、エリートに漠然とした不満を抱えている人。私の友人で唯一のトランプ支持者は、「トランプの移民排斥発言も女性蔑視発言も許されるものではない。でも、自分は昔からの共和党支持者だ。共和党には優秀なブレーンが沢山いるから、トランプが暴走することはないと信じている」と言います。NYTの統計からもわかる通り、トランプ支持者には確かに高卒以下の白人男性が多いのですが、女性・有色人種・高学歴の人も少なからずいます。もちろん、すべての人が人種差別・女性差別的なトランプの発言を支持しているわけではないでしょう。

トランプ当選により現在進行形で起こっていること
それでも、今回の大統領選の結果はマイノリティ達にとって大きな負のインパクトを持っています。日本のメディア等では、「ストレートな物言いの暴言王に、エリート政治家に疲れた民衆が惹かれた結果だよね」「トランプは心配するほど悪くないんじゃない?」というような論調も目立っています。しかし、これは人種問題を目の当たりにすることの少ない日本人だから言える傍観者的な物言いであり、米国に住む当事者にとって問題はそんなに簡単なものではありません。
トランプの当選は、「人種差別・宗教差別的発言」や「女性蔑視発言」が許される、という空気をアメリカに作ってしまいました。実際に、すでに各地でヘイトクライム白人学生によるマイノリティ学生へのいじめ女性への暴行も多発しています。私のカリフォルニア在住の友人(インド系で、思いやりにあふれた素晴らしい女性です)は、MillbraeのBart駅で、ナイフを持った白人男性に数分にわたって「ニガー」とののしられ続ける、という目にあいました。また、私の母校(トランプの母校でもあります)のペンシルバニア大学においても、黒人学生達がいきなりGroupMe(Line的なメッセージアプリ)の「Mud Men」というグループに加えられ、「I love America」というメッセージとともに、黒人をリンチする画像やリンチイベントへの案内を送りつけられる、という出来事も起こりました。しかも、これらはリベラルとされるカリフォルニアやペンシルバニアでの出来事なのです。
11月9日に、私のクラスメートだったアジア系アメリカ人女性はこう綴りました。「子供のころ、見た目が違うやつは出ていけと言われ続けていた。大人になってからは、差別を感じることはあっても面と言われることは少なくなった。しかし、今回のトランプ当選は、声をあげていなかった差別主義者(Quiet racists)に、大声で差別してもいいんだ・行動に移してもいいんだというお墨付きを与えてしまった」。
行き過ぎたPolitical correctnessは確かに窮屈な綺麗事でしょう。しかし、理想を何十年も言い続けることで初めて人々の意識は変わり、現実がついてきます。「平等」「多様性」を重んじるアメリカの価値観は、人種間・宗教間紛争や女性差別などの悲しい歴史への反省を踏まえ、アメリカ人たちが100年以上かけて培い、勝ち取ってきたものでもあります。それを、いとも簡単に崩してしまったのが今回の選挙だと思います。

今年は歴史に残る3つの国民投票がありました。イギリスのEU脱退、コロンビアの内戦継続の決定、そしてトランプ大統領の誕生です。この3つの出来事には類似点があります。メディア予想が当たらず、サイレントマジョリティが勝利したこと。保守・排斥を訴える側が勝ったこと。若者だけであれば、あるいは都市だけであれば、リベラル派が勝っていたこと。可視化された世代間・地域間の溝と、排他主義は、日本でも程度は違えど起こっていることかもしれません。これらの出来事は、一時的な反リベラルの揺り戻しにすぎないのでしょうか、それとも世界が綺麗ごとの通用しない方向に変化していく、その最初の一歩なのでしょうか。一人ひとりがマイノリティ差別・女性差別に対し声を上げていく、そして他者への愛や思いやり(Love Trumps Hate!)を見せていくのは当然ですが、それだけでは抗えない程に世界中で現実問題として排外主義は強まっていく可能性もあります。そうなのであれば、日本は早急に戦後レジームを見直し、起こりうる変化に対応できるよう力を蓄える必要があるのかもしれません。

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